「だいしゅきホールド」を見て、エイベックスがやらかした「のまネコ問題」を思い出した
金が絡むと胡散臭くなる
女性が両手足を使って男性に正面から抱きつく体位を、オタクの間では「だいしゅきホールド」と呼称することがあります。
これをスレに書き込んだ発案者として自慢気に名乗り出た物書きさんが、彗星のごとく現れた(色んな意味での)ホンモノに勝てず、敗走を喫してから今月8日に2年の月日が経ちましたね。
スカッとジャパン以上に胸がスカッとするので、たまにフラ~っと当事者間のやり取りをまとめたものを見に行くのですが、突然2chのAAキャラクターである「ギコネコ」が私の脳内に降り立ってきました。
あぁそうそう。
昔にもこんな事件がありましたね。
「のまネコ問題」です。
時は2005年。今のようにインターネットが発達しておらず、動画投稿サイト「YouTube」が設立されたのがこの年。日本でカルト的な人気を誇る動画投稿サイト「ニコニコ動画」は2年後です。
そんな時代でも、動画制作の技術を持った職人は、「フラッシュ」と呼ばれるアプリケーションを使って動画を制作していました。転じて、フラッシュで作られた動画・ゲーム群そのものを「フラッシュ」と呼びます。
「赤い部屋」「無個性戦隊」「マイケル」━━━━。
昨今のインターネットと違い、素人がホイホイと簡単に動画を制作・アップロードができない時代であったため、好みに合う・合わないはあったものの、技術屋の作られた作品は、どれもこれもが粒ぞろいでした。
そんな電子の海で、一つの動画が産声を上げました。
個人動画サイトに投稿された「恋のマイアヒ」です。
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曲よし、動画よし、感情置き去り
ルーマニア語で歌われる「恋のマイアヒ」は日本人には馴染みない言語であったものの、歌詞には日本語の空耳を付け、動画内では2ch文化の象徴とも呼べる「AAキャラクター」が空耳通りに踊りだす。
小気味いいサビのリズムに、一度聞いたら離れない空耳の数々━━━━。
「恋のマイアヒ」はネットを中心に大旋風を巻き起こしました。その人気は現実社会にも波及し、コンビニや車の有線に乗って流れるし、国民的音楽番組「ミュージックステーション」にだって出演されました。
日本国内に空前絶後の「恋のマイアヒ」ブームが到来します。そしてこの流行りに目をつけたのがエイベックス。
エイベックスは「恋のマイアヒ」動画作成者から許諾を取り、「ギコネコ」らAAキャラクターを「のまネコ」と改名。商標登録を済ませ、次々にグッズを販売し始めました。
もちろんキャラクターの見た目は変えてますし、法的にも何の問題は有りませんでしたが、ネット民の感情は収まらず、これが炎上に次ぐ炎上でとんでもない騒ぎに発展……。
事の顛末はさておいて、私が「だいしゅきホールド」を見て思い出したのは、「のまネコ問題」のこれです。
このキャラクターが「アスキーアートの『モナー』に似ている」といった指摘が相次ぎ、「誰の物でもないネット上の既存キャラクターを改変した上で独占し、利益を得ようというのか」という非難の声が上がった。
自称だいしゅきホールド発案者の物書きさんに対して、こともあろうに外野が「だいしゅきホールドを使って一儲けしては?」と提案していました。
ちなみに提案した人も同じ物書きさんであり、こちらのなろう小説はアニメ化しています。気になる人は調べてみてください。
それに対して、マジモンのホンモノが反応。
多分、私が感じた得も言えぬ嫌悪感の正体は、ネットのスラングを私物化されたことです。
別にどっちが発案者でもいいんですよ。けれども仮に「だいしゅきホールド」が商標登録されたとすると、それに続いて色んなネット発の言葉が、どこかの誰かによってマネタイズされていくかもしれません。
例えば「ベイクドモチョチョ」や「草」。そこらで見かけるスラングがマネタイズされると、金ではなく趣味や面白さで書き込んでいた人たちが消滅していってしまいますし、私達もスラングそのものを使いづらくなってしまいます。
結果としてネットからは面白い人達が消えていき、つまんない奴らのたまり場に━━━━なんてネットの将来を憂う高尚な意識は特にありませんが。
けれども、どことなく両方の炎上騒動に抱えていた嫌悪感の正体がようやくわかってスッキリしました。2年越しの氷解に満足です
以上、「だいしゅきホールド」を見て「のまネコ問題」を思い出した話でした。特にオチも何もありません。
ここは私の日記帳。
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